大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島地方裁判所尾道支部 昭和35年(ワ)191号 判決 1964年3月27日

主文

被告は原告に対し、金二四六、九二一円及びこれに対する昭和三五年六月二六日より完済に至るまで年三割の割合による金員を支払え。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告は「被告は原告に対し、金二六一、三五〇円及びこれに対する昭和三五年六月二六日より完済に至るまで年三割の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決を求め、その請求の原因として

一、原告は昭和三三年四月一日被告に対し、金一、一〇〇、〇〇〇円を、弁済期は昭和三四年三月三一日、利息は一ヶ月金二五、〇〇〇円とし毎月々末限り支払う、期限後の損害金は日歩金九銭の約定で貸与し、被告は同日右債務の担保として、原告に対し、自己所有の三原市城町六〇二番地の一八家屋番号同町二四番の三、木造瓦葺三階建店舗兼居宅一棟建坪一九坪七合五勺、二階一九坪七合五勺、三階一九坪七合五勺の建物に抵当権を設定した。

尤も原告は本件第一回準備手続期日(昭和三七年一二月二一日)において、右貸金の利息は年一割五分の割合であつたと述べたが、これは真実に反し、錯誤に基くものであるから、これを取消す。

二、被告は右貸金に対し、昭和三三年九月末日までの利息を支払つたのみでその余の支払をしないので、原告は前記建物の抵当権を実行し、昭和三五年六月二五日その競売代金より前記貸金に対し金一、三二八、六七八円の支払を受けた。そして昭和三五年六月二五日当時の本件貸金残額は元本金一、一〇〇、〇〇〇円とこれに対する昭和三三年一〇月一日より同三四年三月三一日までの年一割五分の割合(約定利率を利息制限法所定の制限利率に引直したもの)による利息金八二、二六〇円、同年四月一日より同三五年六月二五日までの年三割の割合(約定損害金の割合を利息制限法所定の割合に引直したもの)による遅延損害金四〇七、七四九円である。そうすると、右残債権額より前記支払金を差引くと金二六一、三五九円となる。

三、よつて被告に対し、本件貸金残元本額金二六一、三五九円及びこれに対する昭和三五年六月二六日より完済に至るまで年三割の割合による遅延損害金の支払を求める

と述べ、

被告の主張に対し、原告が被告より、被告主張の日にその主張の金員の支払を受けたことは認める、相殺の抗弁は否認すると述べた。

被告訴訟代理人は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決並に担保を条件とする仮執行免脱の宣言を求め、答弁並に抗弁として、

一、(1)原告主張の一の事実中被告が原告主張の日原告より金一、一〇〇、〇〇〇円を、原告主張の約定(利率、損害金の割合の点を除く)で借受けたこと、被告が右債務の担保として原告主張の抵当権を設定したことは認める。但し右借入金の利息は年一割五分、期限後の損害金の割合は年三割であつた。同二の事実中原告が前記抵当権を実行し、その競売代金一、三二八、六七八円の支払を受けたことは認める。

(2)原告の本件貸金の利息は年一割五分であるとの主張を被告は援用したから、原告の前記自白の取消につき異議がある。

二、被告は本件貸金に対し、原告に次のとおり支払つた。

昭和三三年四月三日  金 四、二〇〇円

同   年四月一三日 金二八、〇〇〇円

同   年五月八日  金二四、五〇〇円

同   年六月九日  金二五、〇〇〇円

同   年七月一一日 金二五、〇〇〇円

同   年八月一一日 金二五、八〇〇円

同   年九月一五日 金二四、五〇〇円

合計        金一五七、八〇〇円

三、原告は昭和三五年七月一日以降被告所有の三原市城町三番地の一六、宅地二一坪六合四勺の地上に、同所家屋番号同町三番の一七、木造瓦葺三階建店舗兼居宅一棟(建坪一九坪七合五勺、二階一九坪七合五勺、三階一八坪)を所有することによつて右宅地を不法に占拠し、一ヶ月金一五、〇〇〇円の地代相当の損害を蒙らしめているものである。そうすると、被告は原告に対し昭和三八年一二月末日限り金六三〇、〇〇〇円(四二ヶ月分地代相当額)の損害賠償請求債権を有するものである。(右債権は被告が原告に対し、尾道簡易裁判所昭和三六年(ハ)第二五八号家屋収去等請求事件において請求しているものである。)そこでかりに原告主張の本件貸金債権が認められるとしても、被告は本訴(昭和三九年一月一七日の本件口頭弁論期日)において、右損害賠償請求債権をもつて、原告の本件貸金債権とその対等額において相殺する旨の意思表示をした。よつて原告の請求は失当である

と述べた。

証拠(省略)

四、よつて、原告は被告に対し、金二四六、九二一円及びこれに対する昭和三五年六月二六日より完済に至るまで年三割の割合による遅延損害金の支払を求めることができるから、本訴請求は右の限度において正当としてこれを認容し、その余を棄却すべく、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条を適用して主文のとおり判決する。

別紙

<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例